やっぱりアテにならない

 

以前にもこのブログサイトで記したことだが、英語では楽器の音について語る時に「Sound」と「Tone」という二つの異なる表現がある。僕がヨーロッパ滞在中に共演する機会のあったアメリカのミュージシャンたちは、ベテランの人ほどこの「サウンド」と「トーン」という言葉を明確に使い分ける傾向にあった。

 

彼らと共演した後に「You play good」と言われたら、恐らくはただのお世辞と思ったほうが良い。日本人の「お疲れ様でした」のようなもので、強いて言えば「お前のプレイ、破綻はしなかったよな」程度の認め方と理解するべきかもしれない。彼らが「こいつ、いいな!」と思うプレイをした時には「You SOUND good」と言ってくれることが多い。「You SOUND GREAT!」または「You SOUND BAD, man!(←最上級の褒め方)」と言わせたら勝ちだ。つまり彼らにとっての「Sound」とは楽器やアンプの音ではなく、そのプレイヤー自身の個性や能力から生まれる総合的な「音楽性」のことを指している。

 

 

と、長い前置きでしたが、これを踏まえて今回の失敗談を・・・

 

最近、ライブやレコーディングで使用するギターに、若干の調整が必要となるケースが出てきました。そこで1〜2本のギターでピックアップを変えることで対応してみたところ、なかなかの結果が出たのですが・・・

 

・・・1本だけ、納得のいくピックアップが見つからない・・・

 

そこで、たまたま動画サイトで配信されていたピックアップのデモ演奏が好印象だったので参考にしてみることに。本来、自分は動画サイトのデモ演奏をあまり信用しないようにしています。どのようなアンプ、エフェクター、ケーブルやレコーディング機材が、どのように使われたのかもわからない状況で、しかも動画サイトの典型的な圧縮された音質では、特にエレクトリック楽器(ましてやピックアップ単体)の音色などわかるはずがないと思っているからです。

 

でもこの日はヒマだったのか、疲れていたのか、それともコロナ自粛で感覚がおかしくなっていたのか・・・「メーカーサイトのデモ演奏だし、まぁまぁ大丈夫か〜」と、なぜか自分に言い聞かせて発注。自分の楽器に取り付けてもらいました。 

 

で、結果は・・・

 

 

・・・大失敗・・・

 

 

・・・全くマッチングしない。あ〜ぁ、だから止めとけって言ったのに〜(←誰もいっとらん)・・・動画サイトの音は全く信用できないことを改めて痛感しました。

 

冒頭で述べた「Tone」と「Sound」ですが、ミュージシャンの音楽性による音(Sound)は、ベテランほどに楽器や状況を問わなくなります。先日亡くなったEddie Van Halenなどが良い例ですが、彼は使用ギターやアンプを替えても「EVHのサウンド」は変わりませんでした。他のいわゆる「ギター・ヒーロー」たちについても同じことが言えるでしょう。このようにミュージシャン自身の「Sound」は動画サイトでもある程度は窺われるのですが、問題は「Tone」のほう。こちらは前述の通り、動画サイトでは全くアテにならないことを再度思い知らされた次第です。

 

結局、お世話になっているクラフトマンにもう一度お願いして、慣れ親しんでいるピックアップに変更してもらいました。これでようやくOKに。余計な「授業料」を払ってしまった・・・

 

そろそろ自分も「やたらと楽器をいじることでひょっとするととてつもなく凄い改善が見られるかもしれない」というアホな幻想(←今でもたま〜に発症する)から完全に抜け出す必要がありますね。

 

ちなみに、次回のライブでこのギターを導入する予定はありません・・・(←では何だったんだ)

 

次回のライブは10月29日。Shoot The Diceの最終ステージとなります。5年間の活動の集大成ライブにぜひお越しください。

 

2020年10月29日(木)

SHOOT THE DICE

Jun Saito: Drums、伊谷 希:Guitars、野々口 毅:Bass

大塚Live House Welcomeback

open:18:30 start:19:00  close:22:00

charge: ¥3.000(予約) ¥3.300(当日) 別途order(テーブルチャージ無し)

学生割引価格:¥1.600

 


煽り運転の犯人・・??

 

コロナ禍にも拘らず、相変わらず何かと慌ただしい日々が続いています。

 

今週はレッスン三昧。西は都内の中野や都立大学駅、東は船橋までと、あらゆるところへ出かけてきました。場所はスタジオ、スクールや自宅訪問など様々ですが、皆さんが現状下でも引き続き安全対策に協力しながら受講してくださることに感謝です。

 

忙しいのはありがたいのですが、最近は頻繁な移動の際に楽器を重く感じてしまうことが多くなりました。う〜ん、なぜだろう・・・決してトシのせいでは無いと思うのですが・・・(←トシのせいだろ)

 

レッスンで取り組むジャンルは生徒さんの目標や希望により様々。今週だけでも60年代ロック、ジャズ・フュージョン、ソウルミュージック、アコースティックジャズなどヴァリエーション豊かでした。でもそうなると、特にエレキギターの場合はどうしても歪み系のサウンドでの演奏にも取り組むことがあります。その際に活躍してくれるのがこれ:

 

BOSS「Angry Driver」

 

ネーミングが、最近メディアなどで問題視されている「煽り運転」の犯人みたいでちょっと困るのですが(皆様、安全第一で運転を)・・・一度ライブ用のエフェクターボードに組み込んでみたものの、ステージで1回使用しただけですぐに引っ込めてしまったものです。2つの異なるディストーションペダルの音を切り替えることができるという、ちょっと「器用貧乏」的なエフェクター(←言い方が悪い)ですが、レッスンでは意外と活躍してくれることが判明。使い道が見つかって良かった〜

 

そして今日は、モディファイをお願いしていたギターが仕上がったので都内まで引き取りに。20年以上も信頼し続けているクラフトマンがさすがの丁寧さで作業を行なってくれていました。

 

このような「柄モノ」のギターはもうほとんど出番が無いものの、楽器のクォリティーは素晴らしいので、現在使用しているメインのギター群にマッチングする音色となるよう調整・モディファイしてもらいました。

 

引き取りの際にお店で仕上がりを確認していると、店長が

 

「おっ、凄いですね!このギター。どこのですか?」

 

 

・・・・え〜、御社の楽器ですが・・・・

 

 

「どんなモデルですか?」

 

 

・・・・「ミラージュ」というモデルをベースに手を加え・・・って、なぜ僕がお店に説明しているのか・・・・??

 

 

昔のモデルで、しかも海外をメインターゲットに販売(←自分もドイツで購入)されていたので、日本では馴染みが薄いのかもしれません。最後にお店にいた誰かが、

 

「最近は木目柄のギターばかりだからな〜。このギターがとても新鮮に見える・・」

 

 

・・・・え〜っ、嘘〜っ。まさか1周回ってまた柄ギターのブーム復活??ひょっとして、またこのギターをメインで使う日がやってくるのかっ・・・・!?

 

 

・・・・なんて、期待せんほうがいい。というか、そんなことを気にするより腕を磨かんと・・・

 

 

 

次回のライブは10月29日。Shoot The Diceの最終ステージとなります。5年間の活動の集大成ライブにぜひお越しください。

 

2020年10月29日(木)

SHOOT THE DICE

Jun Saito: Drums、伊谷 希:Guitars、野々口 毅:Bass

大塚Live House Welcomeback

open:18:30 start:19:00  close:22:00

charge: ¥3.000(予約) ¥3.300(当日) 別途order(テーブルチャージ無し)

学生割引価格:¥1.600

 

 

 

 

 


「密会」で譲り渡したものが・・

 

自粛要請が始まって以来、ものの見事に自宅で缶詰め状態が続いています。食料品等の買い出しや夜分に散歩に出かける以外は、ただひたすら仕事部屋で作業をこなす毎日です。

 

缶詰めとはいえ、実はやるべきことは幾らでも見つかる毎日。オンラインでの音楽作業の整備、新たなカリキュラムの作成、作曲、練習・・・際限なく色々な課題が出てきて、いかに今まで疎かにしてきたものが多いかを痛感しています。せっかくなので、この機会を利用して色々な「スキルの貯蓄」を行なっておかねばと日々取り組んでいます。

 

そのような中、突然ドイツからメッセージが入ってきました。最初は誰なのかわからなかったのですが、以前に教えていた生徒さんからであることが判明。90年代に僕はヴィッパーフルト(ドイツ語読みではヴィッパーフュルト)という小さな市の市立音楽学校で講師を務めていたことがあります。ドイツでは多くの市町村に行政が経営する音楽学校やスポーツクラブなどが存在するのですが、当時この町ではエレクトリックギター科がまだ無く、設立と指導を依頼されたのがきっかけでした。どうせ引き受けるなら本気でやったるっ・・と気合を入れたせいか、年齢を問わずに受講者はどんどん増えて数か月後には満席に。新たな講師をリクルートしないとこなしきれないほどの好評をいただくことができました。このスクールで学んでいた社会人の一人が、今回メッセージをくれた生徒さんだったのです。

 

実は、この生徒さんとは特別な思い出があります。当時、僕が所有していた1台のギターに彼が「惚れ込んで」いて、全く同じモデルを欲しいとESPヨーロッパ社に問い合わせたことがあります。ところが、このモデルは元々メッセ展示用の特注品を僕が譲ってもらったもので同じモデルは存在せず、新たにオーダーすればとんでもない価格となってしまうことが判明。彼は泣く泣く断念しました。

 

その後、僕がドイツを引き払って日本へ越すことになり、機材の一部を処分することにしました。そのような中のある日、彼の奥さんから突然の電話が入り「旦那が気に入っているあなたのギター、もし処分していくなら私に売ってもらえないか。もうすぐ旦那の誕生日なので、サプライズでプレゼントしたい」とお願いされました。あまりにもいい話なので(感涙)、二つ返事で承諾。奥さんと「密会」して(←人聞きの悪い)秘かにギターを譲り渡しました。次のレッスンで、この生徒さんがそのギターを持参して現れた時の、あの幸せいっぱいの笑顔は忘れません。

 

あれから20数年が経った今日。その元生徒さんから「感染症の影響で自宅待機が要請されている。せっかく時間が空いたので、久しぶりにたくさんギターを弾いている。あのギターを」というメッセージとともに、1枚の写真が送られてきました。

 

これがそのギター。ESPのHorizonというモデルをベースにしたセミ・アコースティック。ロベン・フォード系のモダンブルースなどが似合う極上品。

 

この生徒さんが僕のことを覚えていてくれているだけではなく、当時のギターをまだ愛用し続けていることに、写真を眺めながら感動しました。自由に人と会えない現状で、徐々に孤独感や閉塞感が増している人もいるかもしれません。周りから切り離されたように感じて、自分ひとりの世界で恐怖心が高まる人もいることでしょう。でも、たとえ離れていても、本当に大切なつながりというものはなくならない。特に音楽を通じて生まれた絆は一生の宝となるのではないでしょうか。そのような思いでメッセージを読みながら、今まで多くのギターと音楽が大好きな人々と出会えたことに感謝する一日でした。

 

今は大変な時期です。でも、このような状況だからこそ大切なものを再認識できる。そのような考えを持ちながら、また明日も頑張りたいものです。

 

皆様も引き続き安全にお過ごしください。

 

 


「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」Part 3(最終回)

さて、今回でいよいよこのミニ連載記事も最終回のパート3です。まだパート1パート2をお読みになっていない方は、そちらを先にご一読ください。でないと、今回の内容がわかりづらくなりますので・・・

 

「〜褒められるギタリストの音作りとは」パート1はこちら

「〜褒められるギタリストの音作りとは」パート2はこちら

 

 

第5章:ギタリストはいかにして音の「通り」を良くするのか?

 

本連載のパート1で述べた通り、ロックバンドにおけるギター・サウンドは「やかましい」または逆の「聞こえない」といった問題が生じることがあります。最悪の場合は、メンバーにとっては「やかましい」のですが、弾いている本人は「聞こえない」となる時。言われた経験があるというギタリストは「メンバーの連中がわかっとらんのじゃ!」と言わずに(笑)、まずは対策を考えてみましょう。

 

対策1「歪みの度合の調整」

ジャンルを問わずエレキギターを歪ませる理由は、当たり前のことですがカッコいいロックなサウンドを生むためです(僕も大好きです)。

しかし、ここで多くのギタリストが陥りがちな「落とし穴」は、セッティングした歪み系の音が本当に「カッコいい」のか、単に「弾きやすい」のかを判断ができなくなってくることです。

 

パート1の表1でも紹介した通り、ギターの音は歪ませるほどに音の立ち上がりが抑えられ、他の楽器の立ち上がりに負ける(聞こえなくなる)傾向があります。でもそれは同時に、自分のプレイのダイナミクスをコントロールできなくても(悪く言えば雑なプレイでも)気にならなくなり、結果として「気持ちよく弾ける」ことにもつながるのです。でも、それは必ずしも「バンドで良く通るカッコいい音」とイコールではありません。

 

バンド演奏で良く通る歪みサウンドを設定するには:

*先ずは歪の度合いを「これでは全然歪みが足りない!」と思うレベルにまで下げます。イメージ的には、普段は「10」まで歪ませているなら「3〜4」にまで下げる感じです。

*ここから、音を出しながら「ミリ単位」の気持ちで歪を上げていきます。少しずつ歪を増やしていき、必要最小限のポイントを探ります。ここで「最適の歪み」と「弾きやすさ」を取り違えないように注意。「オレのサウンドだ!」と意固地にならずに、バンドメンバーと一緒に判断してもらうのも一つの方法です。

*バンドサウンドの中で最低限に必要とする歪みの度合いを見つけたら(それは元々使用していた歪みの度合いより少ないことが多いですが)、その音に馴染むためにたくさん弾き込んでください。慣れれば、それでも結構弾けるものです。

 

対策2「他の楽器との音域を差別化する」

次の表は、バンド内での各楽器の音域をイメージ化したものです。飽くまでも一つの例として紹介していますので、ジャンルやミュージシャンによってこの音域図は大きく変化します。

 

表4(クリックして拡大できます)

 

上記の表では、ドラムスとベースの主な音域に対して、ギターが「空いている音域」で突出していることがわかります。このように、特に音の立ち上がりのピークが鋭い他の楽器となるべくかぶらない音域にギターをセッティングすることで、パート2でも述べた「ギターの弱い立場」をカバーして聞こえやすくすることができるのです。

 

ネット情報などではよく「ギターはXXキロヘルツ辺りを強調すると抜けがよくなる」などと書かれていることがあります。でもどの音域を強調またはカットすると良いのかは、バンドのジャンルや、もっと言えば同じバンドでもメンバーが別の人に代わるだけでも全く変わる可能性があります。ネットのマニュアルより、バンドメンバーの耳や意見を重視したほうが問題は早く解決するかもしれません。

 

重低音を響かせるリズムセクションと共演するメタルバンドと、中高音域を多用するドラマーがいるジャズバンドとで、ギターの音域セッティングが同じであっていいわけがありませんから・・・

 

対策3「歪みと他のエフェクト〜引き算の法則」

多くの有名なロック・ギタリストが、歪みに加えてディレイやコーラスなど様々なエフェクトを多用しています。僕自身もこれらのエフェクターをボードに常備(またはモデリングアンプにプログラミング)して活用しています。尤も、これらのエフェクトを多用するときには必ず注意すべき「法則」があります:

 

a)「エフェクトを重ねるほどに、音はぼやける」

例えばマルチエフェクターのプリセットなどには購入時からディストーション、リヴァーブ、コーラス、ディレイなどをてんこ盛りにした、まるで観客が入っていない横浜アリーナで弾いているかのような(苦笑)セッティングが入っていることがあります。体感的には気持ち良いかもしれませんが、そんな音を使うベテランはまずいません。僕が以前に住んでいたドイツには、こんなことわざがあります:

 

「少ないほうが多い (weniger ist mehr)」

 

何事もやりすぎるとかえって効果がなくなるという意味ですが、エフェクトの掛けすぎも同じです。せっかくバンド内で通る音を見つけたのに、それを過剰なエフェクトにより周りからまた「聞こえない」と言われ、そのために音量を上げすぎて「うるさい」と言われ・・・これでは振り出しに戻ってしまいます。こうならないためには「引き算の法則」が大切です。つまり、

 

b)「何かを足したら、そのぶん何かを引く」

例えばディレイを強調するならば歪みを減らす(ディレイ成分によって、音は意外と伸びます)。歪みを増やすなら、他のエフェクトを抑えるなど。「全部乗せ、大盛り」はラーメンを注文するときだけにしましょう・・・(←関係ないコメント入れるな)

 

ギタリストの音のイメージは千差万別ですが、以上の点を注意しながらセッティングを心がけるだけで、バンド内での音作りはかなり実践的なものになるのではと思います。諦めずに色々と試してみることが大切です。

 

 

以上、初めての試みとして3回にわたる連載モノに取り組んでみましたが、本当はまだまだ補足したい内容が山ほどあるほど、このテーマは多岐にわたります。その中で、できる限り自分自身の好みやスタイルなどは考慮せずに、抽象的な説明も避けるようにしてなるべく多くの初心者〜中級者のギタリストに応用できる情報をご紹介してきたつもりです。

 

このテーマについてまだご質問などがある方は、下記のリンクよりメールをお送りください。可能な限りお答えするようにいたします。

 

http://itanimusic.com/contact.html

 

最後に:

2020年3月現在、国内のみならず世界でも感染病による不安が広がっています。不安に流されることで、行動や考えがどんどん萎縮していく人も少なくないようです。でも、事態はいつか必ず収束します。状況が好転した時に、力尽きた状態ではなくパワー全開でリスタートできるように、今から各自が自分を磨いておくことも大切ではないかと思っています。

またいつもの生活が戻ってきたときに、皆さんが改めてより元気に音楽に取り組むだけではなく、周りから「なんかギタープレイ、すごく良くなったね!」と言われるようなギタリストを目指されることを願っています。

 

3回にわたる長文、お読みいただきありがとうございました。 

 
 

2020年419日(日)

SHOOT THE DICE

千葉・稲毛APOLLO

start:1830 

charge: ¥3.000 & order

お問い合わせはITANI OFFICIAL WEBAPOLLOまで

 


「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」Part 2

 

さて、今回は「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」のパート2です。パート1でご紹介した情報の続編としてご紹介していますので、前回をまだお読みになっていない方は先にパート1をご一読ください。

 

 

第3章:歪みのギターがバンド内で聞こえにくくなる現象

 

本連載のパート1では、クリーントーンと歪み系(ディストーション)の音の立ち上がりおよび減衰について説明いたしました。そこで今回は、バンドの他の楽器と一緒に音を出した際に何が起こるかを検証してみます。

 

ロックバンドがリハーサルスタジオなどで一緒に演奏するとき、音を電気的に増幅せずに生音でだけで比較すると、恐らく殆どのバンドではドラムスが音量の最も大きな楽器となるでしょう。ドラムセットというものは大きなダイナミクス・ピークを出せる楽器で、計器などで測定するとスネアの鋭いリム・ショットなどはとんでもない立ち上がりのピークを示します。これを演奏中に聞いていて「痛いっ!」とならないのは、そのピークが一瞬だからです。もしスネアのリム・ショットが持続音だったとしたら、リハが終了するころにはメンバー全員の鼓膜が損傷しているかもしれません。

例えると、料理中に熱いお湯が一滴だけ跳ねて腕に飛んでも「あっ」で済みますが、同じお湯に体ごと放り込まれたら大怪我となるようなことなのです。ちなみに、クラッシュ・シンバルなどを全力で叩かれると非常にラウドで、場合によっては耳がキーンとなることもありますが、あれはシンバルの大音量がなかなか減衰しないからです。曲間でずっと鳴り続けている訳ではないのが幸いですが(←たまにやっとるドラマーがおるけど)・・・

 

次の表でも紹介しているとおり、ほとんどのロックバンドではドラムスの音の立ち上がりピークが一番鋭い傾向にあります。

 

表2(クリックして拡大できます)

 

上記の通り、ドラムスに対してエレクトリックギターの立ち上がりはどうしても弱いのですが、特に深いディストーションに設定すると、パート1の「表1」でもご紹介したように弦をはじいたときの立ち上がりが更に弱くなることで、なおさらドラムスに「かき消されてしまう」のです。もちろん、残響は聞こえるのですが、ピッキング時の音が聞こえないということは、大げさに言えばディレイ音だけを聞いているような「遅れる」感じになり、ギタリスト自身はもちろんのことメンバーも「何を弾いているか聞こえない」となってしまいます。

 

「じゃあ、ギターアンプの音量を上げればいいんだろ?」という反論が返ってきそうですが、ドラムスのピークに匹敵する音量でなかなか減衰しないギター音が鳴り続ければ、皆がとてつもない音量にさらされることとなり、当然ながら今度は「ギター、やかましいっ!」につながってしまうわけです・・・

 

そしてもうひとつ、非常に大切な要素があります。

 

第4章:ジャンルによってダイナミクスは大きく変わる

 

初心者や中級者のギタリストの多くは、あまり様々なジャンルのバンドで演奏した経験がないかと思います(初心者だけれど既にロックからジャズまでバンドで幅広く活動しているという方、ごめんなさいっ)。そのため、自分が演奏経験のあるジャンルでの音作り=エレキギターの音作りだと考えてしまう人が多いです。でも、オールド・ブルースに最適なセッティングでメタルバンドに参加しても全く役に立たないでしょうし、スラッシュメタル用のセッティングをジャズバンドで応用しても嫌がられるだけでしょう。

 

次の表は、バンドの演奏中に生じるダイナミクスの変化をジャンル別に表したものです。

 

表3(クリックして拡大できます)

 

飽くまでも一般的な話ですが、ヘヴィメタル系のバンドの演奏では(静かに始まるイントロなどは別として)、全体の音量は大きくても、曲中のダイナミクスの変化はあまりない場合が多いです。つまり、一度バンドの音量を把握してしまえば、ギタリストはその全体音量に自分の音量を合わせていけば良いということになります。

 

ブルースの場合は、往々にしてダイナミクスのピークにそれほど大きな変化はないものの、曲のパートなどによってはダイナミクスがかなり下がることがあるので、それにギターが追従しないと「空気が読めない」プレイになってしまいます。また、ブルースのリズムセクションはメタル系ほどラウドではないものの、音の立ち上がりが鋭いことが多いので、前述の「音の立ち上がりが聞こえない」セッティングだと埋もれてしまうことがあります。

 

ジャズやフュージョン系のバンドでは、ダイナミクスの変化が非常に重要な表現の要素です。特に優れたジャズ/フュージョン系のドラマーなどは、生音だけを比較すればメタル系のドラマーを上回るダイナミクスのピークを叩き出すこともある(音色は異なりますが)半面、ささやくような音量にまで下げていくことがあります。そのため、それに追従するダイナミクス・レンジがギタリストにも要求されます。例えばダイナミクス・レンジが少ないメタル系の深いディストーションなどでは、ドラムスのピークでは「聞こえない」、ドラムスが下がれば「やかましい」となってしまいます。

 

つまり、ギターの音作りというのはジャンルによって「法則」が全く異なり、もっと言えばドラマーやベーシストが別の人に代わっただけでも新たにセッティングし直す必要が生じると考えるべきなのです。

 

ここまではバンド演奏においてギタリストが置かれる「音の立場」とでも言える内容について記してきました。そこで次回のパート3では、バンドサウンドにおいて自分の音が聞こえやすくかつ邪魔にならない(やかましいと受け取られない)セッティングや手法について考えていきます。パート3が最終回となります。 

 
   

2020年419日(日)

SHOOT THE DICE

千葉・稲毛APOLLO

start:1830 

charge: ¥3.000 & order

お問い合わせはITANI OFFICIAL WEBAPOLLOまで

 


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PROFILE
ギタリスト・コンポーザー・音楽講師。

幼少よりよりドイツ在住。ミュージカル、ビッグバンド、ブルース、ハードロックからスイングジャズまでのサポートを務める傍ら、自己のバンド「ITANI」でヨーロッパ諸国にて活動。

1997年に帰国。「ITANI」を再結成する。今まで計3枚のアルバムをリリース。最新アルバム「Station To Station」は海外のプレスからも絶賛される。現在、AmazonやiTunes Storeにて好評発売中。

http://itanimusic.com/

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