「密会」で譲り渡したものが・・

 

自粛要請が始まって以来、ものの見事に自宅で缶詰め状態が続いています。食料品等の買い出しや夜分に散歩に出かける以外は、ただひたすら仕事部屋で作業をこなす毎日です。

 

缶詰めとはいえ、実はやるべきことは幾らでも見つかる毎日。オンラインでの音楽作業の整備、新たなカリキュラムの作成、作曲、練習・・・際限なく色々な課題が出てきて、いかに今まで疎かにしてきたものが多いかを痛感しています。せっかくなので、この機会を利用して色々な「スキルの貯蓄」を行なっておかねばと日々取り組んでいます。

 

そのような中、突然ドイツからメッセージが入ってきました。最初は誰なのかわからなかったのですが、以前に教えていた生徒さんからであることが判明。90年代に僕はヴィッパーフルト(ドイツ語読みではヴィッパーフュルト)という小さな市の市立音楽学校で講師を務めていたことがあります。ドイツでは多くの市町村に行政が経営する音楽学校やスポーツクラブなどが存在するのですが、当時この町ではエレクトリックギター科がまだ無く、設立と指導を依頼されたのがきっかけでした。どうせ引き受けるなら本気でやったるっ・・と気合を入れたせいか、年齢を問わずに受講者はどんどん増えて数か月後には満席に。新たな講師をリクルートしないとこなしきれないほどの好評をいただくことができました。このスクールで学んでいた社会人の一人が、今回メッセージをくれた生徒さんだったのです。

 

実は、この生徒さんとは特別な思い出があります。当時、僕が所有していた1台のギターに彼が「惚れ込んで」いて、全く同じモデルを欲しいとESPヨーロッパ社に問い合わせたことがあります。ところが、このモデルは元々メッセ展示用の特注品を僕が譲ってもらったもので同じモデルは存在せず、新たにオーダーすればとんでもない価格となってしまうことが判明。彼は泣く泣く断念しました。

 

その後、僕がドイツを引き払って日本へ越すことになり、機材の一部を処分することにしました。そのような中のある日、彼の奥さんから突然の電話が入り「旦那が気に入っているあなたのギター、もし処分していくなら私に売ってもらえないか。もうすぐ旦那の誕生日なので、サプライズでプレゼントしたい」とお願いされました。あまりにもいい話なので(感涙)、二つ返事で承諾。奥さんと「密会」して(←人聞きの悪い)秘かにギターを譲り渡しました。次のレッスンで、この生徒さんがそのギターを持参して現れた時の、あの幸せいっぱいの笑顔は忘れません。

 

あれから20数年が経った今日。その元生徒さんから「感染症の影響で自宅待機が要請されている。せっかく時間が空いたので、久しぶりにたくさんギターを弾いている。あのギターを」というメッセージとともに、1枚の写真が送られてきました。

 

これがそのギター。ESPのHorizonというモデルをベースにしたセミ・アコースティック。ロベン・フォード系のモダンブルースなどが似合う極上品。

 

この生徒さんが僕のことを覚えていてくれているだけではなく、当時のギターをまだ愛用し続けていることに、写真を眺めながら感動しました。自由に人と会えない現状で、徐々に孤独感や閉塞感が増している人もいるかもしれません。周りから切り離されたように感じて、自分ひとりの世界で恐怖心が高まる人もいることでしょう。でも、たとえ離れていても、本当に大切なつながりというものはなくならない。特に音楽を通じて生まれた絆は一生の宝となるのではないでしょうか。そのような思いでメッセージを読みながら、今まで多くのギターと音楽が大好きな人々と出会えたことに感謝する一日でした。

 

今は大変な時期です。でも、このような状況だからこそ大切なものを再認識できる。そのような考えを持ちながら、また明日も頑張りたいものです。

 

皆様も引き続き安全にお過ごしください。

 

 


「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」Part 3(最終回)

さて、今回でいよいよこのミニ連載記事も最終回のパート3です。まだパート1パート2をお読みになっていない方は、そちらを先にご一読ください。でないと、今回の内容がわかりづらくなりますので・・・

 

「〜褒められるギタリストの音作りとは」パート1はこちら

「〜褒められるギタリストの音作りとは」パート2はこちら

 

 

第5章:ギタリストはいかにして音の「通り」を良くするのか?

 

本連載のパート1で述べた通り、ロックバンドにおけるギター・サウンドは「やかましい」または逆の「聞こえない」といった問題が生じることがあります。最悪の場合は、メンバーにとっては「やかましい」のですが、弾いている本人は「聞こえない」となる時。言われた経験があるというギタリストは「メンバーの連中がわかっとらんのじゃ!」と言わずに(笑)、まずは対策を考えてみましょう。

 

対策1「歪みの度合の調整」

ジャンルを問わずエレキギターを歪ませる理由は、当たり前のことですがカッコいいロックなサウンドを生むためです(僕も大好きです)。

しかし、ここで多くのギタリストが陥りがちな「落とし穴」は、セッティングした歪み系の音が本当に「カッコいい」のか、単に「弾きやすい」のかを判断ができなくなってくることです。

 

パート1の表1でも紹介した通り、ギターの音は歪ませるほどに音の立ち上がりが抑えられ、他の楽器の立ち上がりに負ける(聞こえなくなる)傾向があります。でもそれは同時に、自分のプレイのダイナミクスをコントロールできなくても(悪く言えば雑なプレイでも)気にならなくなり、結果として「気持ちよく弾ける」ことにもつながるのです。でも、それは必ずしも「バンドで良く通るカッコいい音」とイコールではありません。

 

バンド演奏で良く通る歪みサウンドを設定するには:

*先ずは歪の度合いを「これでは全然歪みが足りない!」と思うレベルにまで下げます。イメージ的には、普段は「10」まで歪ませているなら「3〜4」にまで下げる感じです。

*ここから、音を出しながら「ミリ単位」の気持ちで歪を上げていきます。少しずつ歪を増やしていき、必要最小限のポイントを探ります。ここで「最適の歪み」と「弾きやすさ」を取り違えないように注意。「オレのサウンドだ!」と意固地にならずに、バンドメンバーと一緒に判断してもらうのも一つの方法です。

*バンドサウンドの中で最低限に必要とする歪みの度合いを見つけたら(それは元々使用していた歪みの度合いより少ないことが多いですが)、その音に馴染むためにたくさん弾き込んでください。慣れれば、それでも結構弾けるものです。

 

対策2「他の楽器との音域を差別化する」

次の表は、バンド内での各楽器の音域をイメージ化したものです。飽くまでも一つの例として紹介していますので、ジャンルやミュージシャンによってこの音域図は大きく変化します。

 

表4(クリックして拡大できます)

 

上記の表では、ドラムスとベースの主な音域に対して、ギターが「空いている音域」で突出していることがわかります。このように、特に音の立ち上がりのピークが鋭い他の楽器となるべくかぶらない音域にギターをセッティングすることで、パート2でも述べた「ギターの弱い立場」をカバーして聞こえやすくすることができるのです。

 

ネット情報などではよく「ギターはXXキロヘルツ辺りを強調すると抜けがよくなる」などと書かれていることがあります。でもどの音域を強調またはカットすると良いのかは、バンドのジャンルや、もっと言えば同じバンドでもメンバーが別の人に代わるだけでも全く変わる可能性があります。ネットのマニュアルより、バンドメンバーの耳や意見を重視したほうが問題は早く解決するかもしれません。

 

重低音を響かせるリズムセクションと共演するメタルバンドと、中高音域を多用するドラマーがいるジャズバンドとで、ギターの音域セッティングが同じであっていいわけがありませんから・・・

 

対策3「歪みと他のエフェクト〜引き算の法則」

多くの有名なロック・ギタリストが、歪みに加えてディレイやコーラスなど様々なエフェクトを多用しています。僕自身もこれらのエフェクターをボードに常備(またはモデリングアンプにプログラミング)して活用しています。尤も、これらのエフェクトを多用するときには必ず注意すべき「法則」があります:

 

a)「エフェクトを重ねるほどに、音はぼやける」

例えばマルチエフェクターのプリセットなどには購入時からディストーション、リヴァーブ、コーラス、ディレイなどをてんこ盛りにした、まるで観客が入っていない横浜アリーナで弾いているかのような(苦笑)セッティングが入っていることがあります。体感的には気持ち良いかもしれませんが、そんな音を使うベテランはまずいません。僕が以前に住んでいたドイツには、こんなことわざがあります:

 

「少ないほうが多い (weniger ist mehr)」

 

何事もやりすぎるとかえって効果がなくなるという意味ですが、エフェクトの掛けすぎも同じです。せっかくバンド内で通る音を見つけたのに、それを過剰なエフェクトにより周りからまた「聞こえない」と言われ、そのために音量を上げすぎて「うるさい」と言われ・・・これでは振り出しに戻ってしまいます。こうならないためには「引き算の法則」が大切です。つまり、

 

b)「何かを足したら、そのぶん何かを引く」

例えばディレイを強調するならば歪みを減らす(ディレイ成分によって、音は意外と伸びます)。歪みを増やすなら、他のエフェクトを抑えるなど。「全部乗せ、大盛り」はラーメンを注文するときだけにしましょう・・・(←関係ないコメント入れるな)

 

ギタリストの音のイメージは千差万別ですが、以上の点を注意しながらセッティングを心がけるだけで、バンド内での音作りはかなり実践的なものになるのではと思います。諦めずに色々と試してみることが大切です。

 

 

以上、初めての試みとして3回にわたる連載モノに取り組んでみましたが、本当はまだまだ補足したい内容が山ほどあるほど、このテーマは多岐にわたります。その中で、できる限り自分自身の好みやスタイルなどは考慮せずに、抽象的な説明も避けるようにしてなるべく多くの初心者〜中級者のギタリストに応用できる情報をご紹介してきたつもりです。

 

このテーマについてまだご質問などがある方は、下記のリンクよりメールをお送りください。可能な限りお答えするようにいたします。

 

http://itanimusic.com/contact.html

 

最後に:

2020年3月現在、国内のみならず世界でも感染病による不安が広がっています。不安に流されることで、行動や考えがどんどん萎縮していく人も少なくないようです。でも、事態はいつか必ず収束します。状況が好転した時に、力尽きた状態ではなくパワー全開でリスタートできるように、今から各自が自分を磨いておくことも大切ではないかと思っています。

またいつもの生活が戻ってきたときに、皆さんが改めてより元気に音楽に取り組むだけではなく、周りから「なんかギタープレイ、すごく良くなったね!」と言われるようなギタリストを目指されることを願っています。

 

3回にわたる長文、お読みいただきありがとうございました。 

 
 

2020年419日(日)

SHOOT THE DICE

千葉・稲毛APOLLO

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「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」Part 2

 

さて、今回は「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」のパート2です。パート1でご紹介した情報の続編としてご紹介していますので、前回をまだお読みになっていない方は先にパート1をご一読ください。

 

 

第3章:歪みのギターがバンド内で聞こえにくくなる現象

 

本連載のパート1では、クリーントーンと歪み系(ディストーション)の音の立ち上がりおよび減衰について説明いたしました。そこで今回は、バンドの他の楽器と一緒に音を出した際に何が起こるかを検証してみます。

 

ロックバンドがリハーサルスタジオなどで一緒に演奏するとき、音を電気的に増幅せずに生音でだけで比較すると、恐らく殆どのバンドではドラムスが音量の最も大きな楽器となるでしょう。ドラムセットというものは大きなダイナミクス・ピークを出せる楽器で、計器などで測定するとスネアの鋭いリム・ショットなどはとんでもない立ち上がりのピークを示します。これを演奏中に聞いていて「痛いっ!」とならないのは、そのピークが一瞬だからです。もしスネアのリム・ショットが持続音だったとしたら、リハが終了するころにはメンバー全員の鼓膜が損傷しているかもしれません。

例えると、料理中に熱いお湯が一滴だけ跳ねて腕に飛んでも「あっ」で済みますが、同じお湯に体ごと放り込まれたら大怪我となるようなことなのです。ちなみに、クラッシュ・シンバルなどを全力で叩かれると非常にラウドで、場合によっては耳がキーンとなることもありますが、あれはシンバルの大音量がなかなか減衰しないからです。曲間でずっと鳴り続けている訳ではないのが幸いですが(←たまにやっとるドラマーがおるけど)・・・

 

次の表でも紹介しているとおり、ほとんどのロックバンドではドラムスの音の立ち上がりピークが一番鋭い傾向にあります。

 

表2(クリックして拡大できます)

 

上記の通り、ドラムスに対してエレクトリックギターの立ち上がりはどうしても弱いのですが、特に深いディストーションに設定すると、パート1の「表1」でもご紹介したように弦をはじいたときの立ち上がりが更に弱くなることで、なおさらドラムスに「かき消されてしまう」のです。もちろん、残響は聞こえるのですが、ピッキング時の音が聞こえないということは、大げさに言えばディレイ音だけを聞いているような「遅れる」感じになり、ギタリスト自身はもちろんのことメンバーも「何を弾いているか聞こえない」となってしまいます。

 

「じゃあ、ギターアンプの音量を上げればいいんだろ?」という反論が返ってきそうですが、ドラムスのピークに匹敵する音量でなかなか減衰しないギター音が鳴り続ければ、皆がとてつもない音量にさらされることとなり、当然ながら今度は「ギター、やかましいっ!」につながってしまうわけです・・・

 

そしてもうひとつ、非常に大切な要素があります。

 

第4章:ジャンルによってダイナミクスは大きく変わる

 

初心者や中級者のギタリストの多くは、あまり様々なジャンルのバンドで演奏した経験がないかと思います(初心者だけれど既にロックからジャズまでバンドで幅広く活動しているという方、ごめんなさいっ)。そのため、自分が演奏経験のあるジャンルでの音作り=エレキギターの音作りだと考えてしまう人が多いです。でも、オールド・ブルースに最適なセッティングでメタルバンドに参加しても全く役に立たないでしょうし、スラッシュメタル用のセッティングをジャズバンドで応用しても嫌がられるだけでしょう。

 

次の表は、バンドの演奏中に生じるダイナミクスの変化をジャンル別に表したものです。

 

表3(クリックして拡大できます)

 

飽くまでも一般的な話ですが、ヘヴィメタル系のバンドの演奏では(静かに始まるイントロなどは別として)、全体の音量は大きくても、曲中のダイナミクスの変化はあまりない場合が多いです。つまり、一度バンドの音量を把握してしまえば、ギタリストはその全体音量に自分の音量を合わせていけば良いということになります。

 

ブルースの場合は、往々にしてダイナミクスのピークにそれほど大きな変化はないものの、曲のパートなどによってはダイナミクスがかなり下がることがあるので、それにギターが追従しないと「空気が読めない」プレイになってしまいます。また、ブルースのリズムセクションはメタル系ほどラウドではないものの、音の立ち上がりが鋭いことが多いので、前述の「音の立ち上がりが聞こえない」セッティングだと埋もれてしまうことがあります。

 

ジャズやフュージョン系のバンドでは、ダイナミクスの変化が非常に重要な表現の要素です。特に優れたジャズ/フュージョン系のドラマーなどは、生音だけを比較すればメタル系のドラマーを上回るダイナミクスのピークを叩き出すこともある(音色は異なりますが)半面、ささやくような音量にまで下げていくことがあります。そのため、それに追従するダイナミクス・レンジがギタリストにも要求されます。例えばダイナミクス・レンジが少ないメタル系の深いディストーションなどでは、ドラムスのピークでは「聞こえない」、ドラムスが下がれば「やかましい」となってしまいます。

 

つまり、ギターの音作りというのはジャンルによって「法則」が全く異なり、もっと言えばドラマーやベーシストが別の人に代わっただけでも新たにセッティングし直す必要が生じると考えるべきなのです。

 

ここまではバンド演奏においてギタリストが置かれる「音の立場」とでも言える内容について記してきました。そこで次回のパート3では、バンドサウンドにおいて自分の音が聞こえやすくかつ邪魔にならない(やかましいと受け取られない)セッティングや手法について考えていきます。パート3が最終回となります。 

 
   

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「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」Part 1

さて、今月は空いた時間を利用して、以前から書いておきたかった記事に取り組むことにしました。

 

最近、ロックバンドにおけるギター・サウンドのセッティングについて改めて聞かれることが多くなってきたように思います。ネット上でも「バンド内でのギターの音作りが決まらない」などの悩みをちょくちょく目にするようになりました。ネット情報氾濫の時代になぜ?とも思うのですが、ひょっとすると演奏や音作りの参考を主に動画サイトなどに求めることで、実際に生のバンドで音を出したら「全然違う・・?」となる人が多いのかもしれません(←推測ですが)。無限に近い可能性を持つマルチエフェクターやモデリングアンプなどを使いこなせずに「音作りの迷路」から抜け出せない人も少なくないようです。

 

そのようなギタリストの参考となればと思い、今回は本ブログではたぶん初となる「連載モノ」でお送りします。主に初心者や中級者に向けての記事となりますので、ベテランの方々からの「言われんでもわかっとるわ!」といったツッコミはご容赦を・・・

 

 

「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」パート1

 

第1章:なぜロックギターは「やかましい」のか

 

冒頭から身もフタもないタイトルですが、しばらくお付き合いください。

ロックバンドで演奏されるエレキギターと言えば「歪み」。60年代の半ば、イギリスを中心に新しいスタイルのバンドの人気が高まり、ファンの数がどんどん増えたことでライブハウスやホールでの音量が足りなくなってきました(当時はまだ今のようなP.A.システムが殆どなかった)。そこで無理矢理アンプの音量を限界にまで上げたところ、音が歪んで(つまり割れて)しまうという現象が起きました。この音色が当時としては「不良のロック」のイメージにピッタリともいえる暴力的な魅力を持っていたため、演奏側もリスナー側もこれを喜んで受け入れたというのが現在のロックギター・サウンドのルーツと言われています。

 

但し、当時のギターアンプは歪ませることを前提として作られていなかったため、このサウンドを得るにはアンプの音量を最大限まで上げる必要がありました。それにより、必然的に大音量となってしまうことは当時の「常識」となっていて、実際に60〜70年代に大活躍したロック・ギタリストの中には難聴を患っている人も少なくありません。「ロックギター=音がでかい」というイメージはこの時代に確立されたものであると言え、今でも一部のバンドや音楽ファンの間で伝統的な「ポリシー」として引き継がれています。

 

言うまでもなく、今では多くのアンプにマスターボリュームが標準装備されていますし、コンパクトエフェクターからモデリングまでのあらゆるツールを使って低音量から歪みの音色を作ることもできます。つまり、今の時代には音量をかなり抑えながらでもギターを歪ませることができるのですが、それでもバンド内で「ギターの音が聞こえない」か「ギターがやかましすぎる」という両極端で苦労しているギタリストの方々がいるようです。

 

一番困るのは、ギタリスト一人で弾いている時には歪みサウンドを「やかましく」感じる(特に他のメンバーなどにとって)が、実際にバンドと一緒に演奏すると「聞こえない」というケース。心当たりのある方もおられるのではないでしょうか・・。

本来ならば逆、つまり一人で弾いている時には周りに迷惑とならない音だが、バンドとの演奏ではしっかりと聞こえるセッティングが理想ではないでしょうか。今回の「連載」では、これを実現する術を考えていきたいと思います。

 

 

第2章:エレキギターを歪ませると何が起こるのか?

 

エレキを歪ませるとロックギターのサウンドになる・・「わかっとるわい!」とツッコミが入りそうですが・・実は、ギターには歪ませることで単に音色の変化だけではなく、様々な音響特性の変化が生じます。

 

ギターを歪ませると「やかましい」か「聞こえない」となってしまうギタリストも、歪ませない音色(いわゆるクリーントーン)で演奏して「やかましい」とか「聞こえない」と言われることはあまりないのではと思います。そこで、クリーントーンとディストーション・サウンドが、音色以外にどう異なるかを表で記してみましょう。

 

表1(クリックして拡大できます)

 

注目点は、弦をはじいた瞬間の「音の立ち上がり」です。音量を測定するツール(例えばパソコン音楽ソフトや録音機器のインプット・シグナルなど)でクリーントーンとディストーション・サウンドを比較すると、ギタリストが体感的に「だいたい同じ音量かな?」と思っていても、クリーントーンの音の立ち上がりのほうがはるかに高いシグナルを示すことがわかります。その代わりにクリーントーンはすぐに減衰しますが、ディストーションの音量はより長く持続します。ちなみに、ディストーション・サウンドの立ち上がりシグナルをクリーントーンのピークレベルと同じに設定したら、とんでもなくやかましい音量となることでしょう。

 

つまり、バンド内でのクリーントーンが「よく聞こえる」のは音の立ち上がりが鋭いためで、逆にディストーション・サウンドが「うるさい」と言われる主な理由は、音の減衰が遅くいつまでも大音量で鳴り続けるからです。

 

この場合、歪みの度合いを減らしていくことで、音の立ち上がりはクリーントーンのそれに近くなっていき、弦をはじいたときの音の立ち上がりが聞こえやすくなってきます。これがいわゆる「クランチトーン」です。但し、クランチトーンは歪みが減るほどに減衰が早くなり、音が延々とは伸びなくなる傾向があります。

 

さて、この特性がバンドサウンドの中で具体的にどのような現象を生むのか?これはパート2でご説明します。 

(次回に続く) 

 
 

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どうしていいか

本日は早朝からこちらへお邪魔。

 

最近は所有しているレスポール群(?)をかなり酷使しているせいか、軒並み不具合が生じてきたので見て(診て)もらいました。

 

1本はパーツが取り寄せとなるので後日にお願いすることとなりましたが、おかげさまで2本分のメンテナンスはその場で完了。ありがとうございました。


ここのクラフトマンの方にはもう20年以上もお世話になっていて(←ちなみに自分の生徒さんもほぼ全員)、絶対的な信頼を置いています。自分の楽器を他の方に触らせることはまずないと言えます。

 

世の中で「プロ」と称される方々の中には、職種を問わず誰が見ても納得する・・いや、圧倒される人たちがいます。ミュージシャンや音楽講師の中にも「この人は(超)一流だ」と皆から言われるレベルの人たちが存在するのですが、それは当然ながらクラフトマンについても同様だと思っています。メンテナンスやリペアのレベルが、仕上がった楽器を弾いた瞬間に「おおっ!」となる、次元の異なる腕前を持つ人。細部に亘るまで、まるで弾き手自身の指の感覚で調整してくれたかのような仕上げ。こちらのクラフトマンの方は、正にこのような次元の職人なのです。

 

ちなみに、この方はギター演奏の腕前も素晴らしいという・・・(←お世話になった生徒さんたちがそれを聴いてよく凹んでいます、笑)。一流はプレイでも妥協しないということなのかもしれません。

 

自分の大きな悩みは、もしいつかこのクラフトマンがいなくなってしまったあとは、どうしていいかわからなくなるということ。願わくば、自分のほうが先にリタイアしたいぐらいですが(苦笑)、それはまだまだ先のこととなりそうなので・・・

 

立場は違えど、自分も演奏や講師業で同じレベルで立ち向かえるように頑張り続けたいものです。

 

道は険しいな・・・

 

 

 

次回のSTDライブです。

 

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皆様のお越しをお待ちしております。


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PROFILE
ギタリスト・コンポーザー・音楽講師。

幼少よりよりドイツ在住。ミュージカル、ビッグバンド、ブルース、ハードロックからスイングジャズまでのサポートを務める傍ら、自己のバンド「ITANI」でヨーロッパ諸国にて活動。

1997年に帰国。「ITANI」を再結成する。今まで計3枚のアルバムをリリース。最新アルバム「Station To Station」は海外のプレスからも絶賛される。現在、AmazonやiTunes Storeにて好評発売中。

http://itanimusic.com/

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2020年6月24日(水)
SHOOT THE DICE
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