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「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」Part 2

 

さて、今回は「バンドとギタリストの永遠の戦い?〜褒められるギタリストの音作りとは」のパート2です。パート1でご紹介した情報の続編としてご紹介していますので、前回をまだお読みになっていない方は先にパート1をご一読ください。

 

 

第3章:歪みのギターがバンド内で聞こえにくくなる現象

 

本連載のパート1では、クリーントーンと歪み系(ディストーション)の音の立ち上がりおよび減衰について説明いたしました。そこで今回は、バンドの他の楽器と一緒に音を出した際に何が起こるかを検証してみます。

 

ロックバンドがリハーサルスタジオなどで一緒に演奏するとき、音を電気的に増幅せずに生音でだけで比較すると、恐らく殆どのバンドではドラムスが音量の最も大きな楽器となるでしょう。ドラムセットというものは大きなダイナミクス・ピークを出せる楽器で、計器などで測定するとスネアの鋭いリム・ショットなどはとんでもない立ち上がりのピークを示します。これを演奏中に聞いていて「痛いっ!」とならないのは、そのピークが一瞬だからです。もしスネアのリム・ショットが持続音だったとしたら、リハが終了するころにはメンバー全員の鼓膜が損傷しているかもしれません。

例えると、料理中に熱いお湯が一滴だけ跳ねて腕に飛んでも「あっ」で済みますが、同じお湯に体ごと放り込まれたら大怪我となるようなことなのです。ちなみに、クラッシュ・シンバルなどを全力で叩かれると非常にラウドで、場合によっては耳がキーンとなることもありますが、あれはシンバルの大音量がなかなか減衰しないからです。曲間でずっと鳴り続けている訳ではないのが幸いですが(←たまにやっとるドラマーがおるけど)・・・

 

次の表でも紹介しているとおり、ほとんどのロックバンドではドラムスの音の立ち上がりピークが一番鋭い傾向にあります。

 

表2(クリックして拡大できます)

 

上記の通り、ドラムスに対してエレクトリックギターの立ち上がりはどうしても弱いのですが、特に深いディストーションに設定すると、パート1の「表1」でもご紹介したように弦をはじいたときの立ち上がりが更に弱くなることで、なおさらドラムスに「かき消されてしまう」のです。もちろん、残響は聞こえるのですが、ピッキング時の音が聞こえないということは、大げさに言えばディレイ音だけを聞いているような「遅れる」感じになり、ギタリスト自身はもちろんのことメンバーも「何を弾いているか聞こえない」となってしまいます。

 

「じゃあ、ギターアンプの音量を上げればいいんだろ?」という反論が返ってきそうですが、ドラムスのピークに匹敵する音量でなかなか減衰しないギター音が鳴り続ければ、皆がとてつもない音量にさらされることとなり、当然ながら今度は「ギター、やかましいっ!」につながってしまうわけです・・・

 

そしてもうひとつ、非常に大切な要素があります。

 

第4章:ジャンルによってダイナミクスは大きく変わる

 

初心者や中級者のギタリストの多くは、あまり様々なジャンルのバンドで演奏した経験がないかと思います(初心者だけれど既にロックからジャズまでバンドで幅広く活動しているという方、ごめんなさいっ)。そのため、自分が演奏経験のあるジャンルでの音作り=エレキギターの音作りだと考えてしまう人が多いです。でも、オールド・ブルースに最適なセッティングでメタルバンドに参加しても全く役に立たないでしょうし、スラッシュメタル用のセッティングをジャズバンドで応用しても嫌がられるだけでしょう。

 

次の表は、バンドの演奏中に生じるダイナミクスの変化をジャンル別に表したものです。

 

表3(クリックして拡大できます)

 

飽くまでも一般的な話ですが、ヘヴィメタル系のバンドの演奏では(静かに始まるイントロなどは別として)、全体の音量は大きくても、曲中のダイナミクスの変化はあまりない場合が多いです。つまり、一度バンドの音量を把握してしまえば、ギタリストはその全体音量に自分の音量を合わせていけば良いということになります。

 

ブルースの場合は、往々にしてダイナミクスのピークにそれほど大きな変化はないものの、曲のパートなどによってはダイナミクスがかなり下がることがあるので、それにギターが追従しないと「空気が読めない」プレイになってしまいます。また、ブルースのリズムセクションはメタル系ほどラウドではないものの、音の立ち上がりが鋭いことが多いので、前述の「音の立ち上がりが聞こえない」セッティングだと埋もれてしまうことがあります。

 

ジャズやフュージョン系のバンドでは、ダイナミクスの変化が非常に重要な表現の要素です。特に優れたジャズ/フュージョン系のドラマーなどは、生音だけを比較すればメタル系のドラマーを上回るダイナミクスのピークを叩き出すこともある(音色は異なりますが)半面、ささやくような音量にまで下げていくことがあります。そのため、それに追従するダイナミクス・レンジがギタリストにも要求されます。例えばダイナミクス・レンジが少ないメタル系の深いディストーションなどでは、ドラムスのピークでは「聞こえない」、ドラムスが下がれば「やかましい」となってしまいます。

 

つまり、ギターの音作りというのはジャンルによって「法則」が全く異なり、もっと言えばドラマーやベーシストが別の人に代わっただけでも新たにセッティングし直す必要が生じると考えるべきなのです。

 

ここまではバンド演奏においてギタリストが置かれる「音の立場」とでも言える内容について記してきました。そこで次回のパート3では、バンドサウンドにおいて自分の音が聞こえやすくかつ邪魔にならない(やかましいと受け取られない)セッティングや手法について考えていきます。パート3が最終回となります。 

 
   

2020年419日(日)

SHOOT THE DICE

千葉・稲毛APOLLO

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PROFILE
ギタリスト・コンポーザー・音楽講師。

幼少よりよりドイツ在住。ミュージカル、ビッグバンド、ブルース、ハードロックからスイングジャズまでのサポートを務める傍ら、自己のバンド「ITANI」でヨーロッパ諸国にて活動。

1997年に帰国。「ITANI」を再結成する。今まで計3枚のアルバムをリリース。最新アルバム「Station To Station」は海外のプレスからも絶賛される。現在、AmazonやiTunes Storeにて好評発売中。

http://itanimusic.com/

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