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「撮る」と「録る」の果てしない違い

 

自粛生活が続く中では時間に余裕があるはずなのですが・・・どうしてもブログの更新は夜になってしまいます。なぜだろ・・・??

 

 

それはさておき、今回は生徒さんが発したコメントをきっかけとした記事です。

 

「いま取り組んでいる課題曲、少しできるようになってきたと思ったので、自宅で練習中に録って聴き直してみたんです。すると、頭から全然きちんと弾けていなくて・・・

ショックで、それからは録音ボタンを押すたびにすごい緊張感で演奏するようになって・・・誰も聴いていないのに・・」

 

先日、ある生徒さんが伝えてくれたこのコメントを聞いて、この生徒さんは確実に上達すると感じました。

 

自分の演奏を録音して聴き直す。これを繰り返す。これは、ギターの演奏スキルを効率よく向上させるために大変効果的なメソッドです。信頼できる講師の下で技術や知識を学ぶだけではなく、自身の練習や演奏を自ら録ってチェックすることは、より早い上達につながります。

 

ギタリストの練習には、特に初期の頃に一つの「落とし穴」が存在します。

 

世の中には数多くの楽器が存在しますが、その中には演奏者が自ら音程をコントロールしなければならないものと、音を出すだけで楽器自体が音程をキープしてくれる構造を持つものがあります。例えば多くの管楽器は、演奏者が吹奏時にリップや舌のコントロールで音程を合わせなければなりません(でないと、例えばバルブが3つしか付いていないトランペットからあれほど多彩なメロディーは生まれない)。また弦楽器でも、バイオリンやチェロなどは周知の通りフレットが付いていないので、自分の指と耳でピッチがキープできなければ曲は成立しません(だから、バイオリン初心者が家にいると、家族はしばらくの間は我慢を強いられることも・・・)。

 

それに対して、ピアノやギターは上手い下手は別として、正確な音程が出しやすい楽器です。たとえメロディーやコードが頭の中で正確に鳴っていなくとも、構造上「こことこことを押さえると(または叩くと)正しいメロディーやコードになる」という「マニュアル」がわかっていれば、取り敢えずは必要な音が正確なピッチで鳴る仕組みとなっています。この違いが、練習や演奏時に大きな影響を与えます。

 

「正しいマニュアル」があれば、メロディーやコードとしてある程度は成立する。そのため、自分が良し悪しを判断しなくとも楽器が勝手にちゃんと鳴ってくれるという勘違いに陥りやすいとも言えるのです。そしてこれにより、一部のギタリストは演奏中に

 

「正しく鳴っているはず」→「きっと正しく弾けている」→「うん、正しく鳴っているぞ!」という「思い込み」にまで達してしまうこともあります。

 

つまり、本当は正確に弾けていなくとも「正しく押さえている=正しく鳴っているはず」という方程式を信じすぎて、自分の耳でチェックしながらプレイするという、本来ならば当たり前であるべき確認を無意識のうちに放棄してしまい、きちんと弾けていない部分も弾けているように思い込んでしまうことがあるのです。普段から自らの演奏を聴き直すことに慣れていないプレイヤーが自分のプレイを録音して聴くとショックを受けることがあるのは、リスナーの立場から自分の演奏結果を聴くことで演奏中の「思い込み」の部分が剥がされてしまうからです。でもこれを繰り返していくことで、自らの演奏中にもどんどん客観的にプレイを聴くことができるようになり、より効率的な練習と上達を目指せるようになるのです。

 

録音媒体はレコーダーでもスマホのアプリでもOK

 

ここで大切なポイントは「録音」することであり、「録画」することではないということです。近年はSNSなどに上げる目的で、演奏の動画撮影を行なう人が増加しているようです(僕もたまにやっています)。しかし、上達を目標とするならば、これは必ずしも正しい方法とは言えないのではと考えています。

 

人間の五感の中で、最優先されるのは視覚と言われています。例えばカレー料理が紫色だったり、ハンバーグが青色だったら、たとえすごく美味しかったとしても躊躇する人は少なくないと思います。視覚-味覚だけではなく視覚-聴覚の関係においても、多くの人々の場合は視覚経由での刺激のほうを無意識に優先させてしまいます。

 

以前、ある生徒さんが「動画サイトで見つけたこのギタリスト、とても才能があって凄いと思うのですが」とリンクを紹介してくれました。ところが僕が観たところ、別に下手ではないものの特に突出したものも感じられない。ただ、見た目のパフォーマンスはとてもカッコいい。そこで生徒さんに「試しに、同じ動画を画面だけオフにして音のみを聴いてみたら」と提案したところ、後に生徒さんから「このギタリスト、普通ですね・・・」とのコメントが返ってきました。視覚が聴覚を上回る良い例かもしれません。

 

自分の演奏を周りに発信するには動画を「撮る」。でも、演奏向上のためのツールとしては音のみを「録る」。スキルアップを目指す手法としては、「撮る」と「録る」の間に果てしないと言えるほど大きな違いがあることを念頭に置きながら練習に取り組むと良いのではないでしょうか。


 

今回の投稿に関する質問やお問い合わせは、以下のリンクからご一報ください。お返事を差し上げます。

http://itanimusic.com/contact.html

 

 

皆さんと再会して心おきなく一緒に音を出せる日が一日でも早くやってくることを願っています。

 

 


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PROFILE
ギタリスト・コンポーザー・音楽講師。

幼少よりよりドイツ在住。ミュージカル、ビッグバンド、ブルース、ハードロックからスイングジャズまでのサポートを務める傍ら、自己のバンド「ITANI」でヨーロッパ諸国にて活動。

1997年に帰国。「ITANI」を再結成する。今まで計3枚のアルバムをリリース。最新アルバム「Station To Station」は海外のプレスからも絶賛される。現在、AmazonやiTunes Storeにて好評発売中。

http://itanimusic.com/

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2020年6月24日(水)
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